1.ターゲットとなるブザー 今回、ターゲットとするブザーのメーカーは、SPL LIMITEDで、仕様は、以下の通りになっています。 発生周波数は、3500±500Hzであり、かなり範囲が広くなっています。 この3000〜4000Hz の周波数の信号を選び出す方法として、アナログフィルターでバンドパスを構成する方法もありますが、かなり大掛かりな回路になることに加えて、範囲外の信号を拾わないための特性の立ち下がりがかなりゆるくなってしまう(カットオフ特性)ことが考えられます。 現在は、FFT(高速フーリエ変換) を構成できる素子が入手しやすくなっているので、これを応用して検出するとこの特性を急峻にできますので、これを利用したいと思います。 2. この製品に転用する元製品(AFS)の簡単な説明 弊社が提供している低周波周波数検知(AFS)という製品があります。これは、例えば複数の周波数が入り混じった信号を入力した場合でも、下図のように検出できるものです。これを転用して、ブザー音・検出をしますので、この製品について、あらかじめ少し説明いたします。 1. 検出できる周波数を、上図の一番下の欄(OT1〜OT10)に示すように、10種類、設定することができます。これは、ドロップダウンメニューから、設定周波数を選択できます。 2. どの入力レベルから「検出」とするかのスレッショルド・レベル(上図では28dB)を右端のスライダーで変更できます。 3. これらの設定を、デバイス(この動作を行っているCPU)の不揮発メモリに書き込み保存することができます。 これが、低周波周波数検知(AFS)の仕様ですが、これを今回の「ブザー音検出装置」用に別途、専用の基板を起こして転用して見たいと思います。 3. ブザー音・検出装置の回路図と使い方 信号の入力は、マイクロフォンを使用するので、マイク入力用のアンプ回路を追加します。R6 と R9の値に幅をもたせていますが、所要ゲインに合うように調整してください。 回路図は、下図のようにしました。 IC1は、マイクアンプと、エイリアス抑制のためのフィルターを構成しています。CN1にコンデンサーマイクを接続します。極性があるので注意してください。 10種類の周波数(100Hz飛び)を設定できますが、その一つ一つの検知状況をモニターできるようにするため RAND1(下部の右)という端子を設けています。検出されるとそのランドが Highになりますから、テスターなどでチェックできます。検出があると CN2の1番ピンがオープンコレクタ出力で Lowになります。つまり、PLCなどの入力に直接、接続できます。CN-POW(下・左)は電源で、1ピンが +5V、2ピンが GNDです。これもデバイスを壊してしまいますから、極性と電圧に十分に注意してください。 CN-PROG(上・右)は、IC2にファームウェアに書き込むときに使用します。 下図は、入力3.1kHzの動作状況です。この基板の基本設定(初期設定)を示しています。 出力端子(OT1〜OT10) は、上図のように、500,800,3.0k,3.2k,3.4k,3.6k,3.8k,4.0k,5.0k,6.0kHzに設定してあります。 出力(CN2)を ONする条件としては、500,800, 5.0k,6.0kHz が検出されない事、および3.0k,3.2k,3.4k,3.6k,3.8k,4.0kのいずれかが検出されている事としています。 上図では3.1kHz が入力されています。その状態で、出力3.0kと3.2kが ONしています。検知する範囲(エッジ)はかなり急峻ですが、±100Hzくらいまでは問題なく検知します。 スレッショルド・レベルは、初期設定では 36dBに指定(緑の線)してあります。この図のときの、IC2に入っている信号レベルは、-45dBmになっています。スレッショルド・レベルは、デバイス内部での数値であり、IC2に入る入力レベルと相関はありますが、一応、別々に考えてください。 現在、3.1kHzのところがピークを構成しています。入力のボリュームを上げる(右回し)と、そのピークの位置が高くなり、下げる(左回し)と低くなります。 4. 実際での使い方 上図の設定は、既に初期値としてデバイスに書き込んであり、出力の条件もファームウェアに書き込まれています。 1. 電源CN-POW)、マイク(CN-1)、出力(CN-2)をそれぞれ接続します。前にも 申し上げましたが、電圧と極性には充分ご注意ください。 2. ターゲット(音源)に、マイクを近づけます(15〜100cm)。実際に稼働する距 離に持っていき固定してください。 3. ブサーを鳴動させます。 4. 出力のモニターとしてLED(L1)を付けていますが、それがONしていれば、 ボリューム(VR1)を左回しにしてOFFさせます。OFFしていれば、ボリューム (VR1)を右回しにしてONさせ(確認)、再度、左回しにしてOFFさせます。ター ゲットの音量が非常に大きい場合は、マイクを離して OFFさせてください。 5. 次に、再びボリューム(VR1)を右回しにしてONさせます。このOFFからON になる瞬間の位置が検知するかしないかの境目の位置です。 6. ここから、どこまでボリューム(VR1)を右回しにするかは、判断のしどころ です。ブザー音の大きさもロットによるバラツキもあるでしょうから、余分 に右に廻せば比較的安定に稼働させることができると思います。 7. PLCによる信号検知のやり方は、サンプルとして下記を示します、参考に してください。 ・ブサーを鳴動させる前に、出力が0.5秒の間、連続で OFFであること。 ・次にブサーを鳴動させて、出力が1〜1.5秒間、連続で ONであること。 以上、実際の使用法について、ご説明いたしました。 下に、ブザー音検出基板の写真を示します。 |